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[コメント] TAR/ター(2022/米)

彼女を尊敬し理解しようと近づく者たちにとって彼女はあまりにも不遜で不快な存在だ。同じように、この映画に共感を見いだし楽しもうとする者にとって本作の語り口は徹底して傲慢で不親切だ。よくもまあハリウッドの商業映画でこんな大胆な実験をしたものだ。
ぽんしゅう

本来、ター(ケイト・ブランシェット)は、君臨することに意義を見いだすような権力志向はなさそうだし、権威のために権威を傘に着て物事を行うような俗物ではないのだろう。純粋に音楽に没頭し(キャリアのスタートはプリミティブな民族音楽だった)ているうちに、ベルリンフィルという業界の頂点にのぼり詰めてしまったのだろう。

彼女は自ら感情の赴くまま発言し行動する。その行為はときに非人道的で社会から逸脱し「無意識の悪意」を周囲にまき散らす。しかたないのだ。彼女にとって人や社会は存在しないのだ。ただ自分がそこにいるだけなのだ。そんな主人公を描くにあたって監督のトッド・フィールドは主人公を物語(ドラマ)から切り離し、彼女が置かれた「状況」として断片化してしまい「そこにいるだけ」の彼女をスクリーンに再生する。よく言えばチャレンジング、悪く言えば無謀な演出でした。で、私は肯定派です。

余談です。こんな映画をよくプロデュサーは許したものだと思う。日本語の資料には製作者の記載がないのでIMDbで調べてみたらケイトもトッドも参加してた。役者の我がままとは言わないけど、やっぱりそうだよね。

Produced by

Cate Blanchett ... executive producer

Todd Field ... producer (produced by)

Phil Hunt ... executive producer

Stephen Kelliher executive producer

Scott Lambert ... producer

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)DSCH[*] けにろん[*]

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