[コメント] HANA-BI(1997/日)
社会から乖離した深淵に佇む妻に、社会への失った夫が同化していくまでの、希望でもなければ絶望でもない、ゼロの時間を淡々と追った映画。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
社会を見限った夫にとって、妻の病は重荷でなくなった。むしろ飽きてしまった此岸に決別する良い機会となった。
祝福すべき終焉へのカウントダウンを宣告されるや、夫は喜々として準備を始める。意気揚々と精算をこなしていく。そこには悲壮感もなければ、戸惑いもない。手に入れたのは、浮き世を遊び場ととらえる浮遊した感覚。
そんな彼にとって、妻は自分の後方にいない。むしろ前方にいる。何故なら、社会的欲求を持たない彼にとって、社会的関係から断絶された妻は、自分が身を置くべき場所にいる者だからだ。
此岸にあるまじき浮遊感を以て妻が佇む深淵に、一歩また一歩と歩み寄っていく夫。血の雨の下で、しかし、穏やかな水面のように流れる二人の時間。
そして夫は妻に追いつく。
ところが妻は夫に思いも寄らない言葉を投げかける。
夫は羽をむしり取られる。自分がやってきた事の此岸における意味を知らされる。皮肉なことに、此岸にはいないと思っていた妻の言葉によって。
最後の最後で、自らが去る場所を噛みしめながら、二人はそこを後にする。
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