[コメント] 聖地には蜘蛛が巣を張る(2022/デンマーク=独=スウェーデン=仏)
前作でオレが寄せた信頼を裏切らぬ、流石のアリ・アッバシ監督。背筋も凍るとはこのこと。傑作。
娼婦を次々殺すといえば19世紀倫敦の切り裂きジャックであるが、まったく異なる文化圏である2001年のイランにおいて、実在した大量殺人者のサイード・ハナイは汚れた聖地を浄化する英雄として大衆に支持されてしまう。殺人鬼が言ってる世迷い言を、世間が肯定することの恐ろしさ。これを遠い国のイスラム教社会特有のミソジニー、と切り離して安心してはいられないのが現代の日本を生きるわたくしだ。我々の社会で近年ウナギのぼりの高まりを見せて止む気配のない憎悪、差別、蔑視、冷笑の渦。これが我々と無関係の話とは全然思えないのだ。我々と無関係のところで作られた筈の映画が人間のバグと社会の過ちを明確に描き、それは我々の問題でもあって、我々を問い糾し影響を与える。映画の力とはこれなのだ。
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