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[コメント] カード・カウンター(2021/米=英=中国=スウェーデン)

冒頭からの自省のモノローグが『タクシードライバー』を彷彿とさせ、これからポール・シュレイダーの映画が始まるのだと期待が高まる。感情を封じ目立たないことに徹するこのギャンブラーの性癖は、この男が軍隊で受けた訓練の成果であり後遺症でもあるのだ。
ぽんしゅう

とはいえ男(オスカー・アイザック)は喜びや怒りといった感情を喪失してしまっているわけではない。表に出すことを自ら封じて人生の残りの時間を生きることに耐えているのだ。これは、そんな家族を持てなかった(持たなかった)中年男による"息子”への贖罪の話しなのだ。男は自分にしかできない方法で贖罪にならない贖罪を試みる。そして、カードと戯れていた男の指先は、ようやく人のぬくもりに出会うのだ。

兄のレナードとともにシュレイダー兄弟の映画と言えば「感情の噴出」が見せ場なのだが、本作の脅迫ではなく説得のために行使される男の「威圧」には本人も自覚していない悲しみが、激情のままに敢行される待ち伏せのすえの顛末の描写にはある種の品格を感じた。この悲しみや品格は、どうしようもなく存在してしまう威圧や暴力を描くにあたって、その強行を可視化しなければならいポール・シュレイダーの老成の技に由来するものだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ゑぎ[*]

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