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[コメント] ナポレオン(1927/仏)

私が見たのも例に違わずケヴィン・ブラウンロウがリストアしてカーマイン・コッポラが音楽をつけた四時間版で、テクスト・クリティーク的な観点から云ってこれをどれほど「アベル・ガンスの『ナポレオン』」として評価してよいのか、不勉強の私には判然しないのだが、じゅうぶん面白く見られる作品であることは確か。
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**ネタバレ注意**
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合戦やモブシーンなどはいかにも歴史大作然としたスペクタクル。動きまくるカメラと性急なカッティングが随所で使われ、総じて画面のテンションはなかなか高い。アルベール・デュードネ演じるナポレオンと鷲の二重写しなんかは、現在の目からするとエイゼンシュテインにも通じる一種の「幼稚さ」を感じさせてしまうのだが、そのほかにも様々な工夫がなされており、画作りにおけるガンスの創意の豊かさは率直に賞賛されるべきだろう。

少年時代のナポレオンはデュードネとはとても似ていると云えない美少年のウラジミール・ルーデンコが演じているのだが、この少年時代のパートには子供たちの生き生きとした様子が活写された雪合戦のシーンなどがあり、これはあるいは全篇を通じてもっとも印象深い場面であるかもしれない。

ところで、この映画はシーン(あるいはショット)ごとに画面が青や赤に色づけられているのだが、これがどのような基準で色分けされているのか、分かったようでよく分からない。青が夜の場面を表しているというわけではないし、屋外と屋内に対応して色分けされているのでもなさそうだ。通常のモノクロ画面はかなり白みが強調された色調なので、この色分けはつまりトリコロールということなのだろうし、それはラストのトリプル・エクランで三画面が青・白・赤に分けられることからも明らかなのだが、だからと云って青の画面が自由、白の画面が平等、赤の画面が博愛、を象徴しているとも思えず、やっぱりよく分からない。まあ、この程度のことならそれについて述べた書物もあるのだろうけれど、やはり不勉強の私は知らない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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