[コメント] バティモン5 望まれざる者(2023/仏)
『レ・ミゼラブル』でクソ警官を演じたアレクシス・マネンティが、今回はクソ市長役。いつ観てもクソ野郎の役だが、本当に素晴らしい役者だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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クソ市長の解像度は高い。夜間の運転中、タイヤ転がして遊ぶガキどもに怯える。こんな感じで襲撃されたら打つ手がないという恐怖は「レ・ミゼラブル」におけるパトカー水鉄砲襲撃=死の疑似体験と同じだ。怯えた市長は野良修理工たちを排除する。妻の車に落書きされ、恐怖は止まらない。未成年の夜間外出を禁止する。こういう卑劣なビビリが決まって盾にとるのが法律だ。しかし法は人のためにあるのだ。人を傷つける凶器ではない。
移民の子として移民を助ける活動を続けるアビーは理想の主人公だが、この映画が描く範囲においては無力だ。アビーと友人ブラズは行政の看板を焼く。美しい場面だ。青春を感じる。彼女は市長選に挑む。未来への唯一の希望だ。
ブラズは市長の家を襲う。それはテロだの暴力だの呼んで割りきれるものではない。政治が少数者を踏みつけるとき、踏みつけられた100人の中に1人くらいアンテナが敏感なカナリヤがいて、市長の家を焼きに行ったり米兵を殴りに行ったりする。それは猿が人になって以来、社会の必然だ。ブラズがやらんでも誰かがやる。そうさせぬための努力を政治が怠ってはならない、いや政治か市民かの二元論ではなく、誰だって人を踏みつけていいわけがない。クソ市長は変われるだろうか。
ブラズのバイクに乗らないことで、彼と同じやりかた、同じ生きかたはしないと矜持を示すアビー。彼女は市長になれるだろうか。映画は終わった。なんと、あとは我々次第なのだ。
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