コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ラストマイル(2024/日)

現代社会を裏で支える流通業界の現実を、エンターテイメントに描いた意欲作。☆3.8点。
死ぬまでシネマ

流通業界の現実を描いた名作と言えば『家族を想うとき』('19年/ケン=ローチ監督)がある。日本でも2017年頃からヤマト運輸を中心にこの問題の報道は増えつつあるが、未だ充分な改善はされていないのだろう。本作は『家族を想うとき』よりもエンターテイメントな娯楽作に仕上げた反面切り口は甘くなっているが、健闘したと言えるのではないか。

     ◆     ◆     ◆

「シェアードユニバース」を謳う作品は、えてしてファンサービスに走り愚作となるか、名ばかりのカメオ出演に留まる事になる。本作はハッキリ言って後者の範疇だろう。その世界に石原さとみ井浦 新綾野剛星野 源麻生久美子が存在している事は解ったが、それ以上の意味をなしていないのは残念だ。抑制的に使った事自体は寧ろ好印象なのだが、互いに気付かない位の結びつきの彼らが、物語の中でそれぞれ決定的なピースを担って欲しかった。例えば綾乃が演じる伊吹は、容疑者の男性のアパートに<女の存在>を感じとるのだが(上手く言語化出来ず相棒の志摩(星野)が翻訳)、すぐに防犯カメラで女の存在が判明し伊吹の指摘は決定的ではない。伊吹が指摘する事で捜査範囲や方針が変わり、そこで女の存在が明らかになる、という一手間が欲しかった。つまり配送ドライバーの佐野親子(火野正平宇野祥平)に限らず、皆が自分の現場で全力を尽くす事で、世の中は良くなっていくのだ、というメッセージにまで持って行って欲しかった。

とは言っても、野木亜紀子(脚本)・塚原あゆ子(監督)のタッグには手応えを感じる。本作鑑賞の為に「アンナチュラル('18)」「MIU404('20)」(共にTBS系列)の全話をイッキ視したが、「アンナチュラル」第7話以外は噴飯しないで視られた。今後にも期待したい。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。