[コメント] 幕末太陽傳(1957/日)
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大量の登場人物が特異な小ネタを持ち寄って折り重なる様は川島の名人芸、圧巻としか云いようがない。個人的には『人も歩けば』『特急にっぽん』と並ぶ川島喜劇の傑作だが、本作をさらに突出させているのはフランキー堺の昏さ。川島の私映画というニュアンスは素直に受け止めたいと思う。
病弱で咳ばかりして、女断ちをしていると女を袖にし続け、テロリズムに共感して「三千世界の鴉を殺し主と添い寝がしてみたい」と唄うこの器用な町人は、幇間のような立ち居振る舞いをもうこれで止めてしまうのだろう。次に会った時は笑顔などつくったことのないような人に豹変しているに違いない。そのような予感が徐々に膨らみ収束に至る。それは寂しいが必然なのかも知れない。落語ネタの繋ぎ合わせだが、繋ぎ合わせ部分にこの昏さが立ち上がっている。
抜群のアクションが二箇所あり、いずれも左幸子が絡む。ひとつは縁側、中庭から二階へと至る延々たる南田洋子との痴話喧嘩(3カットだけの長回し)であり、もうひとつは夜半の船着き場がとても印象的な小沢昭一との心中未遂。フランキーに派手なアクションがないのは病弱の設定ゆえなんだろう。左が上手いのは当たり前だが南田もとても良い。
日活製作再開三周年記念のオールスター映画。石原裕次郎は滑舌の悪さばかり目立ち、主役しかできない役者と晒されて気の毒。芦川よしみと駆け落ちする若ボン梅野泰靖は裏主役扱いで好演。アイパッチしている女郎はなんて俳優さんなのか、奇妙な笑い顔がとてもいい。かの有名な幻のラストが採用されなかったのは返す返すも無念。
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