[コメント] オークション 盗まれたエゴン・シーレ(2023/仏)
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その筆頭はやはり元妻 レア・ドリュッケール。「恋をしていないから元気がない」とか言いつつ、さっぱりとした男前なところも格好いい。だが何といっても良いのは、別れた旦那に「あの弁護士はどうなの」とか言いつつも、ちゃっかり自分が…というのが何ともいえない、奔放な魅力を感じさせる。
その女弁護士ノラ・ハムザヴィも良い。絵の受取りのかかった大事な時に、ぬけぬけと休暇をとって悪びれないおおらかな姿が良いし、その上、恋人に会いに行くのにドレスが似合っているか、ちょっと気にする仕草は可愛いし、なんだかんだ言っても姉御肌だし、もうたまらない。
研修生の部下ルイーズ・シュヴィヨットも、意地っ張りなのに見え透いた嘘でやり過ごそうとするところはかわいいが、その割にはけっこうしたたかなのも良い。
他にも、工場夜勤労働者の母親も良かった。人柄の良さが全身から漂っていて、この親にしてこの息子あり、とごく自然に納得できた。
あと、その息子が裕福な一族と対面した場面。いったいどんな言葉がかけられるのかと興味津々で観ていたら、ただただ拍手で迎えられた。下手な言葉をつむぐよりも、この拍手で万感の思いが伝わってきて、心から嬉しくなった。このシーンは、ナチスの暴虐の対極に位置するものは何か、そしてそのことを体現した若者を素直に称えるものとして、本当に嬉しかった。
ここまで言ってしまうと、主役の競売人アレックス・ルッツは、この素晴らしい女性たちとその他の人たちの間で、右往左往しているだけのようにも見えるが、それがまたうらやましいというか、何と言うか。おまけに最後になって一人あぶれたようになってしまって、かける言葉も見当たらないのが、またいいのである。
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