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[コメント] 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は(2024/日)

陰キャのボーイ・ミーツ・ガールだもの。「桜田さんマジかぁ〜」のワクワク感だけで大満足。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







大学のキャンパスで友だちがいないことへの過剰な後ろめたさや、「自分のようなものがあなたを好きになってしまってご迷惑をおかけしました」のような、コミュニケーションにおいて傷つくことにセンシティブな感情をいだく世代の中で恋愛関係にまでいたる難しさがあって、その中で自分と等価値観をいだく異性に出会えた奇跡に喜びの感情が爆発する小西くんに同化してしまい中盤まで幸福感でいっぱいになった。と同時にソロ活動を続けることに小西ほど気後れしていない花田さんにとって、小西と出会ったことへの花田さんの内面の感情が描かれないことに微かに悪い予感、というか違和感を感じていた(その幸福期間中、画面のサイズが左右に狭まったのは視野が狭くなっていることを体感させ、再びサイズが左右に広がることで現実に「引き戻された」と思わせる仕掛けだったのだな)。小西の黒妄想の間、いやまてよ、だったらあの時の花田さんのあの言動はおかしくないか、と小西に代わってそれが悪い方への勘違いであることの検証を頭フル回転でしながら中盤以降観てしまった。

自分の感情についての弁明を過剰に行うのはジャルジャルの真骨頂。中でもさっちゃんの夜道のそれは、好きな人に「好き」という感情を相手にぶつけられず、好きな人に嫌な思いをさせてごめんな、と言ってしまう世代の辛さを感じさせて切なすぎた。

そうやって人を粉々に壊し、自分も粉々に壊れて、その瓦礫の中から前を向くことに「気後れしないこと」を弁明していくラスト。いささか力技感はあったが、村上春樹の「田崎つくると彼の巡礼の年」や朝ドラの「おかえりモネ」などでも描かれ、おそらく東日本震災以降の日本人が強く抱くようになった、自分だけが助かってしまい前を向くことがいいのだろうか、というテーマの一つの解答を示してくれたと思った。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ゑぎ[*]

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