[コメント] 噂の女(1954/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
母と娘が一人の男を取り合う、というベタ〜な設定なんですが、そんな下手したらどうにもこうにもなメロドラマを、島原という古い廓の風俗、能や狂言、鴨川をどりという伝統芸能、京都の風景を巧みに折込みながら、女の悲哀を描く芸術へと昇華した名作です。
特に、能楽堂のロビーで初子が雪子と的場の会話を聞いてしまい、さらに狂言(しかも自分が楽しみにしていた)により自分の恋の滑稽さに気付かされる場面が出色。舞台から聞こえるお囃子の緩急で初子の心理を表す、こういう演出って昔からあったんでしょうか。上手いなぁ。
田中絹代が素晴らしい。母であり女将であり女であるという、どこかに重心を傾けると途端に「それだけ」になってしまう難役を天才的なバランス感覚で好演。脚本も素晴らしいんだろうけど、このバランス感覚が無いと汚らしいだけの役になります。
久我美子も良いなぁ。家業に嫌悪感を抱く娘から、母に替わって井筒屋を差配する女への変化をキッチリ演じてます。いつもゴリラ侯爵なんて言ってごめんね。貴女の飛び抜けて垢抜けた洋装は綺麗です。
大谷友右衛門って誰だったかなぁと思ったら、いまの中村雀右衛門なんですね。古典でいうところの「色悪」に落ち着いてしまいそうな役柄を、現代的で狡猾な青年にきちんと再構築してます。歌舞伎役者ではなく、ここではちゃんと映画俳優。
脚本、演技、演出が完璧な調和を見せている気がします。前〜に観た時は退屈したのに。とにかく素晴らしい。
(評価:)
投票
| このコメントを気に入った人達 (6 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。