[コメント] 武蔵野夫人(1951/日)
家屋の撮影に注目してほしい。溝口監督は洋風建築のセット撮影は下手だが、日本家屋の撮影はめちゃくちゃうまいことに気づく。グラデーションのよく出るねっとりとした照明があうのだろう。さて、俳優に目を転じると
この映画を台無しにした片岡明彦の罪の重さは短いコメントの中であってもぜひ指摘しておきたい。またしても利口じゃない女を演じてしまう田中絹代には哀れみに近い敬愛を感じる。 この被虐的芸風はもっと劇的に悲惨なシチュエーションの中で発揮されるべきだ。轟夕起子は腰回りだけが有閑夫人を感じさせる。山村聡は軍需工場を経営する資本家のニンではない。進歩的主張をする新聞社の編集局長がいいところだ。ただひとり森雅之だけが、シニカルな色事師のインテリという本役を気持ちよく演じており、抜群の安定感を感じる。結論すると、この作品は、巨匠であっても無理な題材には手をつけぬほうがよいという教訓を残す典型的作品でしかない。キャメラマンはこの映画を観て勉強することは多いと思うけれども。
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