[コメント] 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969/日)
全然バカにしたもんじゃないと思うが、乱歩の何を好むのかという点が自分とはかけ離れており、前のめりになる瞬間はなかった。
これは長年ソフト化されないカルト映画として有名で、名画座での上映は幾度かあったらしいが自分は観てない。しかし2017年に東映が国内でDVD化したことを2021年に知って、それならと観てみた次第。
乱歩の「孤島の鬼」、オレはメチャクチャ好きなんですよね… 自分が読んだ中で、日本の長編小説では最も好きな小説のひとつだ。木崎初代さんとの恋のくだりには胸を打たれた。この世にこんな美しい文章があるのかと思ったな。そして「人外境便り」のくだりを読み終わる頃には、秀ちゃんに心を奪われていた。こんなに萌える小説ちょっとないと思います。
石井輝男がそんなことに興味がないのは明らかである。この映画には女のオッパイが無造作にゴロゴロ出てくるが、なんとも粗雑できたならしい。女性になんの憧憬もないのだろう。奇形には情熱がある。意外とミステリもちゃんとやる。人間界からハジキ出されたマイノリティの悲劇にも情熱がある。もちろん見世物としての露悪も堂々としたものだ。メイクはちとアレだけど、ラストシーンも含めて決して低くない技術で作られた映画だ。
島に行って土方巽が登場した時、こいつは『悪魔のしたたり』のサルドゥのように映画を乗っとって何もかもメチャクチャにしてしまうのかな、と一瞬思ったものの、案外ちゃんとセリフ喋ってるし普通に演技してるし話の通じる人のようだった。つまり彼にショックを受けることは特になかった。勝手な物言いだけど、ちょっとガッカリするんだよな。
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