男たちはありあまる性欲のために合法的に女を取り替えて抱き、老人は食い扶持を減らすために潔く死地に赴いて餓死のときを待つ。野蛮だというのは今の我々の勝手な物言いなのだろう。だが、子供が老母を笑って見送ることを強要され、いくらかの言葉を交わすことも許されない…これが全てがうまくゆくための知恵だった時代環境は何ともやりきれない。そして、中途半端な好奇心で穿り返すことの許されない歴史だとの感がひしひしと伝わる。日本人が生態系のリングの中にきちんとおさまっていた頃の昔話、でいいではないか。にわかクリスチャンになる訳ではないが、人間として生きるがゆえの原罪を肯定しつつ生きる現代人が、このファクトに対する理屈をこね回しても無意味なように思えてならないのだ。

予告編の「人間よ、自由に生きよ！」との文字がやけに空しい。