[コメント] キクとイサム(1959/日)
「黒んぼ黒んぼ言わねえでけろ!・・・黄色んぼ!」
まるで自分に向かって言われたセリフであるかのようにどきりとした。少し大きなふもとの町のお祭りを見に行って、周囲からの好奇の目と批難の言葉に対してキクが投げ付けるセリフである。日本人や日本社会を批判する映画は、ともすると自分だけは高い所から見下ろしているかのような視点を取りがちだが、この作品は、われわれの中に身を置き、われわれの中からわれわれ自身を批判した映画のように感じた。
テーマは重いけど、北林谷栄や混血児姉弟を演じた二人、その他村人を演じた役者たちの演技が実にリアルで生き生きとしていて、どこの国の言葉かわからない方言が、妙に愛嬌があって救われる想いがした。ここまでリアルに描くと、安易に解決策を提示することもできなくなるので、どうやって結末を着けるのかと思って観てたが、実に地に足の着いた結末だったと思う。もちろん、これで万事OKという解決策ではないけれど、(そんなものはありはしないし)それを提示して見せるのは映画の仕事ではないのだろう。
実際に混血児であったと思われる高橋恵美子と奥の山ジョージ、jmdbで見る限り映画出演はこれだけだけど、彼らがその後どういう人生を歩んだのかについても興味深い所だ。
85/100(02/03/02書直)
※どうやら私がこのサイトに来て最初に投稿した映画みたい。そのときのコメントは≪演技、セリフ、プロット、みんなリアル。重いテーマを扱うときはこうでなくちゃという見本。≫というものだった。
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