[コメント] バートン・フィンク(1991/米)
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20数年ぶり再鑑賞で初の映画館鑑賞。この映画こそ、映画館の大画面で観て、大音響で聴きたい映画。大画面で観るべき映画って「迫力」だけじゃない。細部の面白い映画こそ大画面で観るべき。そして、コーエン兄弟ほど細部がめちゃくちゃ面白い監督はいない。
ホテルに行くでしょ。フロントに誰もいないから「チ〜ン〜」ってベルを鳴らすでしょ。すると、なぜか床下から現れるホテルマンのブシェ〜ミが、微かに余韻の残るベルをそっと指で抑えて止める面白さ。いろいろあってベッドを壊すシーン。ベッドから外れた丸い玉がゴロゴロっと転がる面白さ。何と言っても、死体を抱えて運ぶ時に、棚に「ゴン!」ってぶつけるんですよ。そういう細部の描写が最高に可笑しい。
しかしこれは、カフカ的悪夢の不条理劇です。この手の話は主人公が迷い込む「迷宮」が必要です。『ビューティフル・ドリーマー』の袋小路の友引町、『ツィゴイネルワイゼン』の切通し。そして、この映画は、ホテルの長い廊下。こういう仕掛けがきちんとできるかどうかが、優れた映画の境界線のような気がします。
でも、このインテリ兄弟は変に説教じみることなく、ずーっと馬鹿やってる感じ。その延長線上に「不条理」があって、不条理劇として「フザケている」印象。そう考えると、彼らは常に「人生が思うようにいかない」という「不条理」を「悲喜劇」として描き続けている作家なのだと、この初期作品で気付かされます。
(2023.07.22 目黒シネマにて再鑑賞)
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