[コメント] ニュー・シネマ・パラダイス(1988/仏=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
コマ切れに撮影されたものを1本につなぎ合わせる。そこに監督やプロデューサーの思惑が介在するのは当然だけれど、ここまで荷が重い(逆に言うと、ヤリガイのある)ものだとは・・・。
頭では理解していたつもりでも、この映画を目の前に突きつけられて初めて判ったと言ってもいいかもしれません。
オリジナル版と完全版。テーマが全然違うんですね。敢えて共通のテーマを見つけてみると、ありきたりだけれど「愛」。でも片や「映画への愛」、片や「女性への愛」。どちらが良い悪いでなく、愛の方向性が全く変わっているのが驚きであり、興味深いことでもありました。
同じラストシーンでも、オリジナル版ではパラダイス座をはじめとした数々の思い出が、完全版ではエレナへの想いというものが凝縮されていました(少なくとも私の中では)。
ひとつだけ極私的に思っているのは、全てを事細かに説明し、解明するのが映画の使命ではないということ。多少、説明不足な事、謎が残っててもいいじゃん。たとえそれが、監督の意図したことではなくても。
「解釈は観客に任せる」とは多くの監督が言っていることだ。
完全版を観て一番ガッカリしたのは、「王女と兵士の寓話」のオチ。つまらなすぎるよ。あれは青年トトが出した結論だけど、それはすなわち映画全体が出した結論だということ。あまりに浅くない?勝手過ぎない?自己完結、自己弁明に終わってない?
あそこは私たち一人ひとりが、自分自身の想いと映画の流れを融合させようと頭を使い、四苦八苦するところ。答えはひとつではあり得ないのだから、簡単に片付けてほしくない。
完全版はあのシーンをきっかけに、私たち観客と共に歩むのをやめ、走り出すことになる。
ところで、124分バージョンと175分バージョンの正式な呼称は何なんでしょう?私も以前は「劇場公開版」、「完全版」と言っていましたが、よくよく考えると「完全版」も劇場公開されてるんですよね。
「完全版」を映画館で観たとき、万一に備えて用意した2枚のハンカチは、使うことなく、そのまま持ち帰りました。
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