[コメント] のるかそるか(1989/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画、脚本が抜群によく出来ている。だが何よりも、「競馬ジャンキーが一日勝ちまくる」という物語で映画を作ったその心意気が素晴らしい。一日だけ神に愛された男、だがその男にとっての最高のハッピーエンドが、失いかけた妻からの愛を取り戻したことだったというオチには、感動しすぎてメシも喉を通らなかった。
世の中にはギャンブルをする人間と、しない人間がいる。オレは個人的に、真剣にギャンブルをできる人間は金に縛られない(と同時に、縛られているチンケな自分とも正面から向き合える)素質と勇気のある人々だと思っている。だって金なんか紙屑だと思ってるからこそ賭けられるわけだし、その一方でなぜ賭けるかといえば、やっぱり金が欲しいからだ。人間が内に持つ巨大な矛盾が、ギャンブルという行為を成立させている。それは、あまりにも人間的な行為だ。
だからこそリチャード・ドレイファスの奥さんを演じたテリー・ガーの台詞、「たかがお金よ」は名言だと思う。一攫千金を夢見てなけなしの金を賭け、一喜一憂する男たち。しかし欲の皮を突き抜けたとき、大切なのは金よりも、かけがえのない人たちと今を生きている実感だった。ギャンブルは時に人を傷つけながらも、人生の何たるかを教えてくれる(時にというか、いつもコテンパンに傷つけられる)。金を失うかわりに、自分を取り戻すことを教えてくれる。あんなに素晴らしい奥さん、なかなかいませんよ。リチャード・ドレイファスは、そのことを知っていた。
というわけで、競馬で大勝負する前の晩、あるいは競馬でボロ負けした日の夜、オレはこの映画を観る。勇気が湧くんです。
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