[コメント] ジャンヌ・ダルク裁判(1961/仏)
ジャンヌが退出する場面を丁寧に繰り返すこのリズム。余りにも緩慢で息が長く超然としている。このような律動を観客ははじめて体験し、これこそが「神」の領域であると知らされる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ジャンヌの発言の神々しさは、とんでもない神憑りの狐憑きだという感想を、次第に転覆させてしまう力強さが籠っている。「質問には一部だけ答えましょう」「それは神の思し召し」「はい、次の質問をどうぞ」。権力にこのように立ち向かえる者は、殆んど人間を超えている。ひょっとして彼女の発言は真実なのでは、という方々から浮かび上がる権力側の動揺と、われわれ観客は同じ位置に立たされ、自らと向き合うことを強いられる。作品がそのように仕向けるのだ。ブレッソン恐るべし。
終盤の「人間」に立ち返る件はキリスト磔刑の反復になっている。これも裁判記録を踏襲した事実なのだろう、凄まじいものだ。
本作の予告編には「ジャンヌの裁判に限らずに、有罪が前提の全裁判を再現」とある。しかし出鱈目にせよ、裁判を行う西洋の伝統も立派だと思う。
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