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[コメント] 家族(1970/日)

やはり最初の計画に無理があったと言わざるを得ない。でも、それでも、時は流れ、人の心は立ち直ってゆく。
青山実花

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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旅の途中で子どもを亡くす・・・、それはもう、親にとってどれほどの苦しみであろうか。これは自分のせいだと我が身を責め、「ごめんねごめんね」と何万回も何十万回も心で謝り続けるであろう。娘の遺骨を持っての斎場からの帰り道、泣き崩れて立ち上がれなかった倍賞千恵子の気持ちが胸に沁みた。

しかし、この旅は、最初から無理があったと言わざるを得ない。長崎から、一度、福山の次男の家に寄ったとは言え、それ以降、子供と老人を連れてノンストップで北海道まで行こうなどとは、いくら金が無いとは言え、無謀としか言いようがない。まして、新幹線乗車時間までたった3時間しかないのに、万博に寄るなど、信じられない暴挙だ。

案の定、青函連絡船の中で夫婦喧嘩が始まる。お互い、責任は相手にあると押し付け合い、言い争う。本当は、一番責めたいのは自分なのだが、それを認めたくない心とのせめぎ合いが、あのような争いになったのであろう。

その後、父親も亡くなり、もうこれ以上の悲しみはないと思われた家族であるが、それでも季節は巡り、春はやって来る。雪原だった大地には緑の草が生え、子牛も誕生した。倍賞千恵子のお腹には新しい命が宿ったという。あれほどの悲しみに見舞われながらも、人々は立ち直り、新しい幸せを模索する。永遠の悲しみなどありはしない、画面からそんな声が聞こえた気がした。

(評価:★3)

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