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[コメント] ふたりのベロニカ(1991/仏=ポーランド)

カレイドスコープの向こう側の世界。子供の頃にビー玉とかいろいろな物を覗いたり透かしたりして、違った風景が見えてくることに胸をときめかせたことを思い出す。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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セピア色のフィルターを通したおとぎ話の空間。水晶、ステンドグラス、窓、眼鏡、レンズ、そこから見える風景は歪んだり、拡大されたり、色づいたり、逆さになったり・・・。パリのベロニカは未来の恋人を、紐きれとか煙草の箱とかカセットとかを透かして見ている。そしてカメラを何気なく覗いて写してしまった、もう一人の自分。

話の内容がどうこうよりも、いろいろな物を透かして見ることの映画という気がした。そして漠然とした予感をカメラの向こう側に見てしまったベロニカの心の震え。そういえばポーランドのベロニカもバスの窓を通して見てたんだよなぁ。透かした風景に満たされた空間で、ベロニカが未知のものに期待したり恐れを感じたりして心を震わせるのが、デリケートに伝わってくる。心臓の病ってのも、とてもらしいといえばらしいし。空気を震わすような歌声も印象的。

なんだかよく分からないエピソードとかもあったりして、話自体にはそれほど興味は湧かなかった。もう一人の自分を見て死んでしまうってのが「ウィリアム・ウィルソン」?って思ったりもしたけど、あんまり関係ないみたいだし・・・。

それでも視線と対象の間に、何かを入れて見る魅力にあふれてたし、監督はきっといろんな物を通した視線にとても興味がある人だと確信する。イレーネ・ジャコブをいろんな風に味わう映画ってのもかなり大きいと思うけど。

(評価:★4)

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