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[コメント] スティング(1973/米)

一番始めに、軽快な音楽をバックにノリの軽い男が階段を上がって事務所に入っていく。考えてみればそこから…
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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…騙されていた。てっきり運び屋の彼が主要人物なのかと思っていたが、彼は騙されたあとスクリーンから姿を消す。古い役者の顔をほとんど知らないせいもあるが、読みの足りない私は、そこからラストに至るまで意表をつかれっぱなしだった。あのマフィアのボスや悪徳刑事を騙していくのと同時に、その行く末を見守っていくはずの観客をも騙していく、この二重の騙し構造は見事なものだった。

ギャンブルにおける騙し騙されの関係を描写しようとすると、個人的には福本伸行の「カイジ」のような、人間の極限状態の暴露に到達するかと思う。その点で本作は軽い。

ところが、本作にはそれ(人間の弱さ?)を補って余りあるほどの人情味とプロとしての意地といったもので満たされている。そこにはニューマンやレッドフォードの佇まいだけではなく、あの殺し屋の完璧主義ぶりなども含まれるだろう。うろ覚えだが、「まだまだかな。(not enough)…でも悪くない(it's close)。」という最後のレッドフォードのセリフにそのあたりが集約されているように感じた。名作であると素直に認めたい。簡素でいて余韻をしっかり残すあの音楽は、五本の指に入る出来である。

(評価:★4)

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