[コメント] ケス(1969/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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初めて見たときびっくりした。地味で目立たないガキ。彼の境遇に涙することはできなかった。自分とまったく違う環境にいるはずなのに、なんだかものすごく近い気がした。
あの映画に出てくる人たちは自分のことだけで精一杯で、子供の面倒なんか見ない。子供なのに弱肉強食に巻き込まれる。悲惨だ。夢を持ったって、現実が素早く近づいてくる。現実に押しつぶされそう。それを感傷的にしないで、どこにでもある、なんでもない話のようにしてしまう。ケン・ローチのリアル。映画のリアルはこういうのなんだ、とただ衝撃を受けた。
友達がいないビリーが拾ったケスにともだちになってもらう。お互い尊敬し合う友達。理想的だねえ。それはビリーの思いこみかもしれない。この話ではよくわからない。でも、あの国語の時間、ビリーが熱心に友達のことを語る。ケスが飛んでるところを挿入したりしないこのシーンで、私も先生やクラスの奴らと一緒に想像した。
ラスト、彼の住んでる世界ではきっとあれが当たり前なんだろう。泣きながらケスを埋めているビリー。ここでブツッと切れる映画。ケスに出会ってから、炭坑夫じゃない、新しいことをしたいと思い始めたビリー。成績が悪いから無理と言われたビリー。それでも、少しの間だったけれども、夢にふれることができた彼はきっとこのままじゃ終わらない、何かあの兄ちゃんとは違う奴になってくれるさ、と思うのはあまりにお気楽かもしれない。でもそう思いたかった。
夢あるだけが映画じゃない、現実を細かく描いて、そこから自分で何か希望でも夢でも見るようなもの(見なくったっていいけど)、こんなのも映画なんだと教えてくれた(思いこまされた)私のケン・ローチ初体験。6年くらい前だったかしら。
この対極にあるのが『グース』だあね。
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