[コメント] Love Letter(1995/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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とても綺麗な映画を作る監督として、私としても注目株の岩井俊二監督による、ラブ・ストーリー。
この監督は自分の作品に何かしら他とは異なる特徴を持たせる傾向があり、それがとても面白い。それはほんのちょっとした違和感であったり、あるいは物語そのものに貫くテーマであったり。いずれにせよ、監督らしさ、と言うのをここまでよく表せると言うことでもっと評価されても良いと思う。そのこだわりが非常に好み。
私は最初にこの作品を「ラブ・ストーリー」と書いたけど、実際はあくまで思いは一方的なものに過ぎず、その愛情は決して返ってこないもの。それをしっかりラブ・ストーリーに持って行けたのは、ひとえにカメラアングルのお陰だろう。この映画の中でも特に現代の描写は俯瞰の映像が多い。いないはずの樹。その存在感をカメラの背後に感じさせようという構成なんじゃないかな?
いない人間に対する一方通行な愛情を、回想シーンと癒しを絡めて丁寧に作ってくれていた。実際内容的にはテレビシリーズっぽい題材だけど、雪を絡め、丁寧に、そして綺麗に仕上げてくれたのには非常に好感が持てる。
なんでも本作の予算は映画を作るギリギリとも言える2億だったそうだが、監督自身の意地で編集に徹底的に時間をかけ(全撮影行程をディジタル化してパソコンに取り込み、20時間に及ぶシーンを削って削って2時間にまとめたと言う)監督らしいこだわりと、そして映画に描ける愛情とが垣間見えるようだ。
中山美穂が二役を演じているが、そのどちらも届くことのない自分の想いが、徐々に癒されていく課程を丁寧に辿っていき、最後にそれを受け入れるところまで持っていっている。
細かいストーリーの連続で構成されているのが特徴だが、ただ、中学時代の想い出がなかなかノスタルジックで良いんだけど、それに共感できなかったのは私自身の資質なんだろうなあ。
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