[コメント] Love Letter(1995/日)
恥ずかしや90年代
自分には岩井俊二の映画は壊滅的に合わないと判ってたのに、CSで放送してたからって2020年にもなってつい観てしまった自分が悪い。いたたまれなく、恥ずかしい。話がぬけぬけロマンティックポエムだから恥ずかしいのではなく、映画のありようが自分には恥ずかしかったのだ。
小樽ミポリンの住む古ぼけた洋風民家。レトロ図書館。レトロ病院。すっからかんのガラス工房。図書室の貸出カード。揺れるカーテン。スカシた本のスカシたタイトル(中学の図書室にプルーストという難解ギャグ)。醜いものは雪で隠して、白を飛ばしたフィルター撮影。岩井俊二の「好もしいものが画面に映っていれば、好もしい映画になる筈だ」という素朴で無邪気な信仰。はいせんすボクチャンの、はいせんす映画。こういう恥ずかしいのってCMとかPVによくあるよなーなんて思ってたら、岩井監督そちらのご出身なんですな。特に工夫もなく自分の好きなもので画面を埋めてしまう、そうすることに躊躇のない映像作家はちょくちょくいます。岩井俊二にドッカン直撃を受けた新海誠先生の初期作など、まぎれもなくそのクチだ。
いきおい映画は雰囲気ものと化す。神戸ミポリンなんか何やってメシ食ってるのか全然判らぬ、ほとんど抽象的な人物だ。ガラス職人への根拠なきフンワリアコガレなんか実にしょうもなく、たいへんダサい。しかしそれゆえに、本質的にダサい大衆に求められ、支持されたのだと思う。そこがいいんじゃない! というやつだろうな。
調べて驚いたんだけどこの映画、地下鉄サリン事件の5日後に公開されている。そんな時期によく客が入ったもんだと思う。岩井俊二恐るべし。
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