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[コメント] テルマ&ルイーズ(1991/米)

水蒸気を砂埃に変えて(笑)。時代も変われば観方も変わる。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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4Kレストア版にて、2024年になって恥ずかしながら初鑑賞。実はリドスコってあんまり観てない。弟トニスコはもっと観てないけどね。リドスコ トニスコ ラブ注入。

今では「シスターフッド映画の金字塔」と言われる本作ですが、当時はシスターフッドという言葉は一般には浸透していませんでした(たぶん60-70年代に生まれた言葉で、再燃して一般に浸透するのは2010年代後半だと思う)。覚えてるけど、『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』って映画なんか「現代の『テルマ&ルイーズ』誕生」ってコピーだったからね。

そういった意味でも、この映画は、当時と今とではだいぶ印象が違うと思うんです。

91年当時は「プッツン女」なんて言葉で片付けられたかもしれませんし、私だって「そうは言ったって、自業自得の面もあるんじゃない?」と思ったかもしれません。でも、33年後の今観ると、いかに当時の女性たちが虐げられていたか、誇張でも何でもなく、ガチでリアルにこんなだったなあと思うのです。この映画のダメ男(夫やトラック運転手)も、今ならがっつりハラスメントですが(当時はハラスメントなんて言葉も無かった)、当時は「あるある」で許容されていたと思うんですよね。むしろ女性側に対して、「そういう社会的制約の中で生きる術を見出すべき」という批評だってあったはずです。今じゃ考えられない発想ですけど、当時はそういう時代だったんです。

映画の中で、口紅を投げ捨て、時計や指輪やアクセサリーを売り払います。彼女たちはそうやって「女性」を拘束する「社会の制約」を脱ぎ捨てていきます。そしてついには、この世の制約からも飛び立っていくのです。カーリー・クーリという女性脚本家は、男社会の作った枠組みの中で生きる結末を拒否したのです。男の物語なら「滅びの美学」であるストーリーが、彼女たちだと前向きな物語に思えるから不思議です。

あと、今観ると大したことなく見えるけど、CGもドローンもない時代に、結構手間のかかった撮影をしていると思うんです。結構、カメラが移動するんですよ。ステディカムが一般的になったか、軽量化されたんだと思うんですよね。走ってる車をカメラが回り込んだりするから、バイクで撮影できるくらい軽量化されたんじゃないかなあ? キューブリック『シャイニング』の「ドヤッ!」って使い方から10年も経つと、技術もこなれてきて、自然に使えるようになってるんだなあ。

もう一つついでに言うと、ブラピだって出世作『リバー・ランズ・スルー・イット』より前でしょ?いろんな意味で、なかなか「早い」映画だったように思います。

ま、そういう歴史的な意味合いを抜きにして、面白い映画でしたけど。

余談

ちょっと思うんですが、ハンス・ジマーの音楽が大げさ過ぎない?『氷の微笑』のジェリー・ゴールドスミスもそうだったけど、90年代の音楽ってこんなだったっけ?

(2024.02.25 ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞)

(評価:★5)

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