[コメント] 河(1997/台湾)
ミンリャンの描く台北に最終出口なし。でもこの映画を観ている間、私は寂しくなかった。
観客の時間の感覚をじっくり奪い、終いには自我すら失わせ「ただの目」にしてしまう独特の間合いは少しやりすぎの感も。イラチな人には辛抱たまらんでしょう。前作『愛情萬歳』よりまた間が伸びたんじゃないか? という気もする。
でも観ている内にフト気づくのだ。いま一瞬、自分どこにもいなかったなぁと。それは個人差もあるのだろうが、普通はどんな映画を観ていても自我はある。その自分が色んな感想を頭の中でブツブツ呟きながら観ている。
だけどこの映画でオッサンが延々と部屋の掃除をしているシーンや主人公がバイクを(普通の速度で)走らせる長いシーン、またはあまりの沈黙の長さに次第に目線が画面上を彷徨ってしまうシーンの数々を観ていると、自意識がフワッとどこかに消えてしまうのだ。そこに映る事柄にとりたてて何の強い感想も抱けず、またどの登場人物にも共感しようがない(監督が意図的にキャラクターへの感情移入を拒んでいるようだ)。
「なんかもの凄く寂しい空気」を感じつつも「助けてあげたい」という気持ちになるでもなく、全くの無感情な2つの目として映画が終わるまで傍観し続ける。どこにも存在すらしない私はもう寂しくない。映るのは悪夢でもないし現実でもない。ラベルのない正真正銘の孤独。
かなり好みがわかれそうだけど、孤独でたまらない人にこそ観て欲しい。
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