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[コメント] 大怪獣東京に現わる(1998/日)

これぞ本物の怪獣映画!夢の『ゴジラ対ガメラ』をあの松竹がやっちゃった。マニアを自称するならば座して見るべし。但しこれは「あさま山荘」だ?
sawa:38

「あさま山荘事件」は国民全員参加の事件だった。何の変化も起こらない遠景の山荘の映像に国民は何日も釘付けになった。この事件には犯人側や警察側から描いた「当事者」のドラマが数多く存在することだろう。但し、主役はTVの前にいた視聴者だった。

リアルタイムで事件を体験した者たちは「あさま山荘」と聞いただけで当時の超個人的な思い出が頭をよぎるはずだ。強烈なインパクトある事件にも関わらず、当時の私たちは楽しくて楽しくてしようがなかった。親と友達とひとつの事件を全身で共有する楽しさ。ワールドカップでの日本戦を国中でTV観戦したあの日と同じだ。

一日中TVの前にいたが、遠い「あさま山荘」で何が起こっているのかは別として私たちにはそれぞれの生活があった。国内で非日常的な事件が起こってはいても、私たちの生活はさして変わらない。警官や市民が殺されて事件が拡大すればするほど視聴者は興奮していった。(喜んでいった・・・)

大怪獣東京に現わる』では、これをリアルにそしてシニカルにそして見事に描いてみせた。東京の街が破壊され、市民が血まみれで殺されていっても現場から遠い福井の地ではイベントのひとつでしかない。

これまでの「怪獣映画」で描かれる人物は、当然の事ながら事件の渦中に身を置かざるを得ない人々だった。怪獣に対して敢然と立ち上がる勇気ある人物だった。しかし、そんな人物たちに感情移入するのは容易いことではない。私もあなたも、そんな人物にはなれないし、なれるチャンスもない。私が感情移入できる人物とは、崩れ落ちるビルの瓦礫に押しつぶされる名も無いエキストラぐらいの筈だ。

ふぅー、私はこれまで無事に生きてこれた。大事件や大事故は私を避けて、 どこか「遠い」所で起きてきたからだ。きっと怪獣が現れても、私はこれまでと同じにTVの前で興奮しながら惨状を楽しむのだろう。「あさま山荘」や「地下鉄サリン」「貿易センタービル」と同じようにだ・・・

これは「私たちの目線」からみた「怪獣映画」だ。これほどまでに同化出来る「怪獣映画」が過去に存在したか?否だ! マニアならば座して見るべきだろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)寒山拾得[*] tkcrows[*] 甘崎庵[*] 半熟たまこ[*] じぇる[*]

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