[コメント] ロビン・フッド(1991/米)
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ひとことで言うなら、要するにこの映画は《お子さま向け》の冒険活劇なんですね。だから単純明快(つまり子どもなら誰でも楽しめるつくり)で、勧善懲悪、しかもなお、小気味よいスピード感。その反面、セリフ聞いてると、いちいち登場人物が状況説明や自分の心情を解説したりしているんですもん、もうそれだけでお子さま向け映画だとわかるはずじゃない? おとな向けの映画としてみれば、冗長なセリフですよね、こういうの。
で、西洋の歴史学習物語(Osuone B. Glossさん)でもありますから、歴史的な背景もキッチリ描いている。当時はイギリスなんてド田舎で、アラブ世界のほうが先進国だったようすをさりげなく描いているという点でも、やはりお子さま向け。
ところが、字幕翻訳の戸田奈津子センセイは何を勘違いしたか、おとな向けの映画だと受けとったらしいフシがある。本来子ども向けに付け加えた状況説明や心情解説を苦心惨憺したあげく、おとな向けに翻訳してしまったから妙なことになった。たとえば、お姫様が悪代官に襲われてあわやというシーンで、お姫様は"I have no choice."って言うんだけど、それをとんでもないセリフ(何だったっけ、もう忘れた)に訳しているのを観て、思わず仰け反った覚えがあります。これ、お姫様の心情を単にセリフ(独白)にしただけなのに。
それはともかく、お子さま向け映画だということがわかれば、これは力作ですよね〜。監督のケビン・レイノルズは子ども向け映画でも全力投球はハンパではありません(言っときますけど、これ、ケビン・コスナー作品ではありませんから念の為)。戸田奈津子センセイが勘違いするのは無理もない(?)。子ども向けだと思って観ていれば、おとなでもそれなりに楽しめる作りになっている。子どもの目を楽しませるための派手な映像に「おーっ!」なんて思ったりしませんでした? 《子ども向け冒険活劇》としては、良くできていると思えますね。サービス精神たっぷりで面白く見せるような工夫が随所にみられる。だからといって、おとなの鑑賞に耐える、なんてわけがない。「冗長だ」「退屈だ」「説明がくどい」って、そりゃそうに決まってんじゃん。子ども向けとして評価するなら点数はもっと高くしてもいいけど、「わたし」にとっての評価なのだから点数は「2」にせざるを得ませんね、ここでは。
感心はしたけど「感動」「感激」といえるものは何もなかった。
それにしても勘違いなさったのは戸田奈津子センセイだけではなく、ずいぶん多くの評論家の方々も、頓珍漢でマト外れな解説や批評をお書きになったので、「あんたたち! 英語わからずに批評するんかっ?!」って首をひねりましたわよ。
まったく大人げないったりゃありゃしない。子ども向けの映画を「ああだ、こうだ」とムキになって批評するなんてねぇ。勘弁してよ〜、もう。
以来あたしゃ戸田奈津子のクレジット見るたび心底ガッカリして、なるべく字幕を見ずに、必死で英語の聞き取りしてるんでおます。あ〜あ。
【追記】この映画観るために実は予習したんです。リチャード獅子心王だとかジョン王だとか、十字軍関連・ノルマンの騎士団の文献から、上野美子さんあたりの本までずいぶん探して……。で、結局子ども向け映画だったでしょ、だから相当ガッカリしたの。極私的事情だけど。子ども向けなんだったら、そうわかるように宣伝してほしかった……。
【追記】備忘ブックリスト→http://www4.justnet.ne.jp/~15041954/j-bunken.htm
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