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[コメント] 鮫肌男と桃尻女(1998/日)

監督はデビッド・リンチが大好きなのだろうが、問題は小手先だけのテクでなぞってる事。本物の異常さはもっと内側からジワ〜と滲み出てくるものだ。
mize

 原作者の望月嶺太郎も『バタアシ金魚』『お茶の間』は好きだが「鮫肌男…」を読んでガッカリ。よほどタランティーノに感動したのか、まんまパクリ。銃の突きつけ合い、危険な男と女の逃避行…等々、それらを消化せずにそのままコラージュしただけだった。

 それはいいとして、映画の方は赤いラウンジ等かなりリンチに影響されている。ああいう異常な悪夢世界が大好きな自分としては興味深い映像だが、問題は監督が本物の異常な世界を持ってはいない事。だから異常さを醸し出すためのテクニックだけで終わっている。本人は普通にオシャレなだけの人なのだろう。

 監督というものは自分の世界観を作り上げるうえで、決して妥協してはいけないと思う。そういう意味であのキャスティングはかなり中途半端だ。鶴見辰吾や運転手してる若者など空気が違う役者が混ざっている(頑張ってるけど)。浅野は好きだし本作でもカッコ良かったが、印象が薄くて脇役に喰われている。監督は「ただヘンな人がいっぱい出てくる」映画を目指しているだけで、個々のキャラに愛情を持ってはいないので、結果的に形だけのヘンさで終わっている。

 ここまでケナしても★3なのは、ひとえに岸辺一徳と我修院達也につきる。岸辺は自分に求められているもの・果たすべき役割をよく判っている。シュールな若者映画に出演したベテランにありがちな、張り切りすぎが無くて良い。我修院は中盤からの登場にもかかわらず、完全にこの映画の総てを食い尽くてしまった。あれだけやっても素に見えるのが凄い。結局この2人からしか異常さは匂ってこなかったのが★4→3の理由であり、同時にテクニック集で終わったカタルシスのない本筋が★2→3になった理由でもある。

(評価:★3)

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