[コメント] 剣(1964/日)
女々しい恨み節がドライな映像で語られると何とも侘しい気分になる。正座の辛さは描き切れず様式美に逃げているが、合宿先の光景のカット繋ぎにはさすがの躍動感がある。こんなものに付き合わされて気の毒な三隅。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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途中までは上手くいかない組織論として見応えがある。今しか考えないというムルソーみたいな主人公の自己規定も捌き様によっては興味深いものになっただろう(ただのサークル活動ってのが間抜けながらも不気味)。それが自死という、いつもの三島節の炸裂で台無しになる。何て情けない主将だろう。完璧かしからずんば無、傷ついた鳩は殺してしまえ。殉教の美学とは要するに迷惑なエリート意識ってことだ。さらに酷いのは顧問の先生の、彼は純粋だったとかいうフォロー。これはもう、死んだあとこう思ってくれたらいいナという三島のナルシスティックな願望が剥き出しである。思想傾向がどうこういう以前に、近寄りたくない性格の男だ。あんただけは、そんなに死にたいのなら、ウジウジ云っていないで早く死んでほしい。人に迷惑のかからない方法で。
『からっ風野郎』やら『憂国』やら、三島は映画で死ぬ練習をたくさんしているが、本作はそのジュブナイル版と云ったところ。どこまでが芸術による昇華で、どこからが広告だったのだろう。まあ、どうでもいいが。
ずっと以前に観ていたことを、不良がトイレから出てきた女子をからかう件で思い出した。ここだけ記憶していたのだった。その他いくつも舟橋和郎得意の喜劇っぽいギャグが挿入され、孤高の主人公と世間との折り合いのつけ方という処で説話論的にも機能しているのだが、独立してみた方が愉しい。
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