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[コメント] 鉄道員〈ぽっぽや〉(1999/日)

俳優は好きだし、映像もきれい。心を打たれました。しかし・・・
ちわわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画で表現されている世界観に、かなり反撥しました。

頑なに駅とともに生きてきた男が、様々な契機によって、人生を回想し、そして死んでいく。自分の幸福を確信して。

この頑なな主人公に、特徴的なのは、将来を拒否することです。友人から退職後の職を手配してもらっても、拒否する。将来の心配は不要でした。死ぬのですから。

満足を残し死ぬ。これは一つの人生の理想でしょう。しかし実際にはエゴかもしれませんね。

主人公は我が子と妻に十分につくさず死なせたことを悔やみつつ、でも自分の生き方にプライドをもっています。その生き方を支持する人、支持しない人いろいろいるのですが。

主人公の眼の前にあらわれた死んだ娘は、何を表現しているのか?本当に娘は主人公の生き方を応援しようと現れたのでしょう。これはおとぎ話やSFとしておもしろい。でもこの映画の中心は男の生涯であって、空想のおもしろさにない。(たとえば「飛ぶ夢はしばらくみない」「異人たちとの夏」はそこに力点があります)とすると、この幽霊は、単に「仕掛け」になります。

何の仕掛けか?男が、自分の人生を確証して、幸福を確証し死ぬための仕掛けです。これは、悪くとれば、男のエゴが生み出した妄想の幽霊なのではないか?それとも神さまが使わしたのでしょうか?

考えればこの幽霊、赤ちゃんで死んでるのだから、実に実体のない幽霊のはず。皮肉なことにこの映画で一番自由で生き生きしているのは、この幽霊なのです。

未来がない、と先に書きました。この映画は何があるかわからない未来に背を向けている印象をもったのですが、如何でしょうか?立派な人生を歩むはずの若者たちにも、未来は感じませんでした。

でもこの映画が心を打つのは、大自然のなかでいきる人々を捉えた映像、主人公に過去のイメージを浮きだたせる映像の手法によります。原作はよんでませんが、この物語を映像的に処理した手法は、評価すべきところだと思う。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] TOMIMORI[*]

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