[コメント] ダンディー少佐(1965/米)
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そもそもダンディーがアパッチを追う理由は何なのかわからない。執念、正義感、意地、そんなところだとは思うが、それを明確にするだけの行動原理が描かれていないため軸となる物語が弱い。そしてペキンパー自身も、フォード、ホークス、アルドリッチ、シーゲルに影響を受けつつ(知ったかぶりです、すいません)自身の方向性と個性を模索しており、その苦しみが映画全体に滲み出ているように感じられる。DVDによれば、脚本が完成しないまま撮影を開始したらしく、その混迷振りが映画そのものと言っていい。しかもペキンパー編集版は3時間近くあったらしく、プロデューサーによる大幅なカットも惜しまれる。
結果的に残念な出来に終わったと言わざるを得ない作品だが、部分的には名作と思わせるような気合の入った場面も多く捨てがたい。生活感のあるリアルな兵士たちの描写、魅力的なキャラクターたち、人間味溢れる村の祭り、そしてクロサワを意識したかのような西部劇らしからぬ馬と剣による決戦など。特にクライマックスの戦いで馬上の敵をライフルでぶん殴る牧師の姿は「七人の侍」の菊千代へのオマージュを感じさせるなど随所に光る場面も多くペキンパーの情熱と気迫を感じさせる。そして男泣き映画の「ワイルドギース」のハリスはこの映画へのオマージュと思われる。
また、ダンディーの中途半端な村への介入が事態の悪化を招いてしまい、結局自分たちの手に負えず撤退という流れは、ベトナム戦争や911後のアフガン、イラク戦争の結果を予見している点も興味深い。その一方でアパッチとの戦いは手抜きというか、気の抜けたぬるい演出でまったく盛り上がらないという激しい落差。どう贔屓目に見ても名作とはいえない消化不良な作品だが、この経験で学んだからこそ大傑作「ワイルドバンチ」がある。独自のスタイルを築いた映画作家ペキンパーの「失敗は成功の母」を体現した野心的迷作、嫌いじゃない。
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