コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] シャイン(1996/豪)

それほど輝いているようには見えない。
24

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







《ヒトの役に立つ、と幻想することは、大抵の結果としてヒトを不幸にする。》−富岡多恵子

確かにデビッドはラスト結婚式あたりで最も幸福そうに見える。精神を病んでいても、だ。いや、幸福に見えるのは部分的な解放によるものかもしれない。もちろん父親の死によるものである。デビッドは生れ落ちたときから既に運命が決まっていたと思う。

デビッドにとってやはり、父親は悪だ。あの親の元に生まれてきたことはこの上なく不幸であると思う。父親には何か邪教的な臭いすら感じる。父親は心から息子を愛しているのだが、その方法は極めて独り善がりなものだ。自身の愛されなかった記憶への反動からか、息子と家族に愛情を注いでいるのだが、あさっての方向に向き見事なまでに他人の求める幸福と噛み合っていない。デビッドは度々自分を出そうとするが、その都度父親に巧みに丸め込まれ(抱擁や復唱、叱責などによる)、傀儡になっている。父親の「呪い」は彼の精神を蝕んでいるのだ。

ラスト、彼はまだ輝いてなどいない。言い方は悪いが彼に付着した泥が洗い流されたに過ぎない。デビッドは一生父の記憶から逃れることはできないだろう。だが父の死により、少なくとも新しい人生への変化への道は開けたはずである。輝くのはそれから先の彼の人生にかかっている。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)TOMIMORI[*] ざいあす[*] じぇる

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。