[コメント] 勝手にしやがれ(1959/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ゴダールの諸作を観てから改めて本作を観ると、とてもあっさりしていてスマートな作品という印象を持つ。無理矢理な引用も過剰な言葉も抑え気味になっている。
引用の多いゴダールも決して嫌いではないが、言葉のすべてを受けとめられないので、多くのセリフがとてもそらぞらしく聞こえてしまう。本作でもラスト以外での二人の睦み言は結構退屈なものだった。
しかし、『気狂いピエロ』もそうだが、全体的な筋書きや細かな展開に魅せられることは確かだ。野放図に破滅へ向かっていく若者が描かれているようだが、細部に注目するとジャン・ポール・ベルモンド演じる主人公は、若さみなぎるハイティーンではなく、かつて会社で働いていたこともあるそれなりの年齢の男である。ある程度の分別をわきまえていなければならない年齢の人間が、不道徳な行為を重ねる。なんと愚かな、そう思う。ただ、その愚かさや強がりから時折垣間見ることのできる哀愁が心に突き刺さる。他作品のレビューでも何度か言及したが、若さのほとばしりというものは、それが遅くやってくるときほど、ひりひりと痛みを感じさせる。
私はひねくれ者で人間ができていないから、かつてはヤンキーで暴れていたけど今は更生して真面目に生きていますという人を退屈に感じ、いい年してから衝動に突き動かされ破滅的行動に流される愚か者に魅力を感じる。『タクシードライバー』しかり『俺たちに明日はない』しかり。(最近で言えば中国映画『一瞬の夢』などもその代表格だと思う。)(★3.5)
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