[コメント] 仕立て屋の恋(1989/仏)
パトリス・ルコントの映画を見るといつも、自分でも認めたくない心の根深い部分に巣食う本性を暴かれた気になる。
ミシェル・ブランがかなりキモい。ハゲでチビで唇ツヤツヤで睫毛だけ微妙に長くて。据わった目が変質者のソレにそっくりで、そのくせ無駄に潔癖症なんて、好きになれって方が無理な話。
サンドリーヌ・ボネールも妙に色情魔っぽいし、ただ人を振り回して楽しんでいる風にしか見えないし、ダメ男を好きになるただの尻軽女のようにも見えた。
そんな二人を見ていて、共感出来るハズがない訳で。見ている間中嫌悪感でいっぱいだったにもかかわらず、映画が終わった頃には言葉にし難い感情でいっぱいになっている。認めたくなかった自分の本性を暴かれた気持ちになる。必死でどこかおかしい登場人物たちを否定しているにもかかわらず、心の深いところでは彼らと同じような自分がいる。それを認めざるを得なくなる状況に追いやられるのだ。
パトリス・ルコントの映画でいつも思う事は「醜悪な中の美」。醜さの中に美しさを感じる事自体が変態ちっくなだけに、人はその中に美を見出す事に抵抗を感じる。自分は変態じゃないと思いたいから。けれども人間なんて所詮変態なんだよ。でもそれでもいいじゃないか。・・・そう思わせる妙な説得力が彼の映画の中にはいつも、ある。
醜さと美しさのどちらかに寄りすぎるとたちまち嘘くさい偽者になってしまうんだろうけど、彼の映画はいつも絶妙な均衡を保っている。そこが彼の素晴らしさであり、才能なんだろうと思う。
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04.10.06 記
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