[コメント] 金融腐蝕列島 呪縛(1999/日)
日本人は銀行が倒産するという非現実的な事柄を受け入れる事に抵抗がなくなった。ひと昔前には考えられなかった現実である。ましてや通常の会社ならば、それはごく当たり前の出来事である。
かくいう私もかつて勤めていた外資系の会社が突然に日本から撤退という事実をニュースで知り愕然とした経験を持っている。
この映画はヒーローを登場させ一級のサスペンス映画として描き切っていた。社会派映画のレッテルを貼られているが、娯楽映画としても充分な面白さを兼ね備えている。それが本作の高評価に繋がっているのだろう。
そしてそのヒーロー達の背景に潜むのが単に正義感だけではなく、職を失うという恐怖がある事が本作を一級のサスペンス、否ホラー映画に匹敵するほどの恐怖感を醸し出しているのだと思う。
自分ならあのような状況下で上に楯突いて立ち上がる勇気があるか?また、その先に待ち受けているハッピーエンド(会社再生)が待っていたとしても、自身の処遇はどうなるのだろうか?本作で劇中の主人公達が言う、「捨石」だと・・・
確かにそうだろう。再建の立役者とはいえ、組織のルールを脅かし秩序を破壊した者に輝かしい未来を約束するような企業は甘すぎる。もちろん映画的にはそうなって欲しくはないが、現実的にはそんな輩は組織には不必要である。
「安定した生活」、こんな言葉は陳腐極まりないのだが、具体的には月に一回で良いからファミレスでハンバーグを食べられる生活、子供に気軽にコンビニで100円の菓子を買ってやれる生活、私はそんな生活を続けたい。若いコメンテーターからみたら、何てショボイ夢なんだと馬鹿にされるのがオチだろうが、家族を抱えた身となってはささやかだが私にはとても大事な(それこそ地球が滅亡するよりも)本当に大事な事なんです。
本作のヒーロー達は本当に格好良かった。私のような立ち上がる勇気を持たない小市民にとっては格好が良過ぎた。だからこそ言う。アトもうちょっとだけでよかったから、職を失った場合に路頭に迷うであろう一般社員をもっと描いて欲しかった。主人公の役所広司はあまりにもサラブレッドであり、小市民には手の届かない存在だからだ。だからこそ辞職を余儀なくされたMOF担当の椎名桔平の苦悩とその後の姿をワンシーンでよいから描いて欲しかった。
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