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[コメント] 海の上のピアニスト(1998/伊)

「寓話」としての魅力。それを自ら損なうラスト。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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新大陸への期待を胸に大西洋を渡る移民たちを乗せた大型船、その船で生まれ一歩たりとも外の世界へ踏み出すことのない一人の男、という対比。「寓話」としての魅力あふれる設定がこの映画を支える。

女神像を目にした男が新大陸の名を叫び一斉に乗客たちが歓声を挙げるシーンの高揚感、下船しようとする娘と1900が交わす短い会話の切なさ、そして、タラップで眼前の摩天楼を見やりしばし制止する1900の姿の意味深さ。

演奏シーンでいえば、床を滑るピアノやジェリー・モートンとの対決よりも、窓外の娘に見とれつつ主題曲を奏でる録音シーンのほうがずっと素晴らしい。前二者は映画らしい面白さはあるが、少々狙いすぎな感がある。

船を降りるべきか降りないべきか、といったことはどうでもいいが、ラストについては、やや「生々しすぎる」感じはした。はたして、1900をあえて登場させて長々と語らせるべきだったのか。「寓話性」という、この映画最大の魅力を自ら損なってしまっている気がする。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ダリア[*] プロキオン14[*]

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