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[コメント] 非情の罠(1955/米)

傑作。後のキューブリック作品より劣っているのは脚本と音楽だけ。既にしてやりたいこと(撮りたい画)は明確で、しかもそれはほとんど成功している。暴力描写にも容赦がない。自称キューブリック・ファンに本作を擁護するかどうか尋ねれば、その人がキューブリックの映画(画面)好きなのかキューブリックの思想(お話)好きなのかが分かる。
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映画を見終った人むけのレビューです。

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痺れるショットが数多くある。大通りを横切るアイリーン・ケインを縦構図の横移動撮影で捉えるところには「低予算でもやることはやるぜ」というキューブリックの強い意思を感じるし、ジェイミー・スミスが大道芸人に絡まれるシーンの居心地の悪さや、夢をネガで表現するという着想のほか、鏡や窓の使い方もよい。スミスがフランク・シルベラのアジトから逃げ出してからラストのマネキン倉庫での戦いに至るまでのシークェンスはスリルと滑稽さが両立されていてすばらしい。この滑稽さはキューブリックが彼らを徹底して突き放して描いているからだろう。シルベラの部下が追跡中に足を挫いてしまうなどという馬鹿馬鹿しさは非常に私の好みだし、シルベラの髪を振り乱した必死すぎる顔にも笑いを誘われる。

フラッシュバックの中でフラッシュバックを行うという構成も、稚拙さより人を食ったような印象を与えて、とてもキューブリックらしい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)赤い戦車[*] chokobo[*] ロープブレーク[*] きわ[*]

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