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[コメント] 恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ(1989/米)

それぞれが同じ街の片隅で、それぞれの生活にエールを送りつつ自分の毎日を送る。孤独であっても少しだけ救われたりするのって、そんな事を思う時なのかもしれない。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







確かに人は支えあって生きていくものだとは思う。でもあまりにもたれかかり過ぎると、お互い潰れてしまうことにだってなりかねない、そんなことを15年以上も仕事のパートナーを組んでいるこの兄弟を見て思う。

性格を補い合えたとしても、目指すものが違えば、遅かれ早かれ運命共同体の関係は破綻する。その破綻のきっかけになったのがスージー。ジャックと寝たり、自分のしたいことが出来ない意気地なしと、彼を焚きつけたり。そして(恋も仕事も)その気になったジャックを前に、あくまで俺たちの仕事を優先しろ、と文句を言うフランク。その実彼も何のことはない、あくまで弟よりも彼自身の家族と生活が大事というだけ。

生活の安定よりも、自分のしたいことを優先させたい。自分のしたいことも大事だけど、まずは安定した収入がなければ。うまくやってるようで、全く違う生活を目指している2人は、あまりに近すぎてそんなお互いの生活が見えてこなかったり、認められなかったりしたように思える。所詮アニキとは違うことをあらためて知り、ジャックは1人にならざるを得ない孤独を思い知ったのかもしれない。

そんな彼に「一歩離れてお互いの存在や生活をリスペクトする」という視点を教えてくれたのは、スージーでもなくフランクでもなく、実は上の階に住んでいる女の子なのでは。そしてそこがこの映画で一番秀逸だなぁ、と個人的に思ったところでもある。彼女もジャックに依存し過ぎていたことを反省し、母とその新しい恋人との生活を顧ようと前へ一歩踏み出す。そんな姿を見て、ジャックはそそくさとケンカ別れしたフランクに会いに行く。ジャズが演出するオトナの世界の映画に見えて、実はみんなオトナになりきれてないんでないのかなぁ、と思ったり(笑)。

そしてスージーもまた然り。彼女にも目指す生活はある。それでも「また会えるはず」と告げるジャックは、今は自分の生活で精一杯だけど、お互いが本当に必要な存在であれば、足場が固まった頃にはきっとまたチャンスは巡ってくるハズ、なんて心の中でつぶやいていたのかもしれない。そして、そこから本当の「オトナの恋愛」も始まるのだろうなぁ、と。

しかしこの映画にも難点はある。ミッシェル・ファイファーの歌声が、いまひとつ心に沁みない(結局スージーは歌で人気が出たのか、色気で人気が出たのかよく分からん)のと、ジェフ・ブリッジスがどう見ても繊細な指の使い手には見えなかったこと。それでも、お話自体は心がほのかに温かくなって好印象だったので、オマケで4点。

(評価:★4)

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