[コメント] モスラ(1961/日)
典型的山師であるところの悪役ジェリー伊藤の口上に、なぜかジュンときたのです。夢をなくしてたのはジェリー、あんたじゃなくてオレだったんだ。
「皆さん…よくいらっしゃいました…今は原子力の時代になりました…でも皆さん…奇跡は昔のことでしょうか…そして…神秘は言葉だけのものでしょうか…いいえ…奇跡は今でもあります…神秘も…夢ではありません…では只今より…現代の奇跡…現代の神秘…私が南海の孤島で発見いたしました…かわいい妖精をご紹介します…」
興行師・ジェリーのこの口上のあとで小美人が歌う「モスラの歌」。あの名曲を聞きながら、なぜだかやたらと感動してしまった。決して昔の映画だから小美人という大法螺が通用したんじゃない。決して昔の映画だから夢があったんじゃない。気難しい観客が夢を見るための周到な準備は、すでにこの演説でなされていたんだ。
1961年は現代と比べるとなんとなくのどかな時代と思いがちだが、時代にのどかもおおらかもクソもないはずだ。今の日本のほうがよっぽど平和ボケだろう。それなのにこの映画が見せてくれた夢を、現代に見ることが困難なのだ。この映画でやれたことが、現代ではできないのだ。なぜだ。そう思うと、泣けてきた。
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