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[コメント] 盲獣(1969/日)

アングラ劇タッチは愉しく俳優単位では素晴らしい作品。最初から逝っちゃっている抜群の船越英二を彩る緑魔子の抑揚素晴らしく、千石規子さんのガラッパチばあさんもさすが。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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しかし母子関係の相克は常識的で地味だし、そんなことより駆け足に済ませた終盤のふたりの喜悦をこそ丁寧に描写すべきだった。強姦されて愛しちゃう緑という展開は三流エロ漫画的手抜き、こういうのは誰が観ても納得させる心理の襞を描こうとしてほしい。その他あれこれ、差別描写含めて白坂らしいシニカル蔓延だが、最後はまあふたりとも愉しく逝っちゃうのだからそれはそれで結構でしたねとは感じる。

結局、設定自体が無理なのではないか。谷崎-乱歩の世界が映像作家を触発するのはよく判るが、箆棒に美しい小説「春琴抄」に伍する映画が作られるとは思われない。本作から出てくる感想は、視覚はイマジネーションを限定する方向にしか作用しないという退屈なものだ。

最後の両手両足切り落としにおける象徴処理などまるで突き抜けない(手法的に島津の『お琴と佐助』を一歩も出ていない)し、しかし実際の切断を見せられても醜いだけだろう。ふたりはそこで映像には捉えられない喜悦を体験していたはずだ。視覚の抹消による昇天を前にして映画の観客が覚えるのは隔靴掻痒の感ばかりだった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)水那岐[*] けにろん[*]

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