コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] オール・アバウト・マイ・マザー(1999/仏=スペイン)

あくまでも雰囲気の映画。だがハリウッドの流行風ロマコメとは違った意味での女性視聴者を惹きつける空気感はアルモドヴァルならではの映画となっていてSO-SO
junojuna

セシリア・ロスの「エステイヴァン!!」という、彼女の息子の名を呼ぶ酒焼けした喉から放たれる叫び声が耳について離れないということでも、個人的にはひじょうに鮮烈な記憶となっている作品である。この映画はいわゆる物語を解釈して判るという部類の作品ではない。そこにあるのはただただ女の存在である。女は母であり、女優であり、子であり、オカマであり、そうした女の群像から浮かび上がる女性性というものを、自らの女性性からの投射をもってアルモドヴァルが指し示した女の連帯感の映画だ。男を自認しているものがこの映画の魅力をイマイチ理解できないのは、多くの女があまり西部劇に興味を見出さないのと同じ感覚だろうと思われる。それだけセクシュアリティの奥に脈打つ本質的な感慨が滲んだ映画なのだ。この作品を見るにつけ、どこか女は物語のロマンというものから距離をおいて生きる生き物なのだということが感じ入ってくる。ただし、物語のロマンが無い代わりに、ただ一瞬の美しさを生きる刹那的なロマンというものがヒシヒシと伝わってくる。そうした瞬間を美しく生きたという証が、女の年代記を思わせるさまざまな世代の女性像に現れる時、観る女性にとってのロマンが自己同一的に立ち現れ、またそこに連帯感ともいうべき女ならではの友情が際立つ所に、この映画の美味があるのではないか。そういう意味で、この映画は男である私にとってはどこか立ち入り不可能な領域があるように思えてならない映画なのだ。ひいては男子禁制の映画とでも言おうか。ただ、勝手にそう思えばこそ、この映画のパッケージにはもう少し工夫があったと思う。それはセシリア・ロスを中心に描くモノローグ的な映画であるよりも、さまざまな年代の女性がもう少し群像として存在するような位置に置かれていた方が良かったような感じ。 女をここまで持ち上げて描くのであればこそそう思う。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus 寒山拾得[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。