[コメント] 旅芸人の記録(1975/ギリシャ)
約4時間、眠気や便意と戦うこともありながらも、なんとか念願の劇場での鑑賞を果たした。アンゲロプロスの映像美学に圧倒され、感覚的に凄い映画だと実感した。長さに耐えてでも「もう一度観たい」と思える傑作史劇だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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たとえギリシャ史やギリシャ悲劇の知識がなくても、約4時間にも及ぶこの映画が持つ映像の力には圧倒されてしまうだろう。そして観終わったあと不思議とこう思う。「もう一度観たい!」。長尺かつ、淡々としたワンシーンワンカット、コンディションによっては眠気との戦いにもなる観るのに体力のいる映画であるにもかからわず、である。
この映画はタイトル通り、“記録”である。旅芸人の一座が旅する際に、ギリシャでの歴史の移り変わりの見ていく記録。旅芸人の視点で眺めると、ムッソリーニ支配下、ナチスの占領、レジスタンスの抵抗、軍事独裁政権の成立、といった第2次大戦前後のギリシャの模様が映像を通して伝わり、激動の時代での苦労も伝わってくる。
それに加わり、旅芸人の家族模様が『エレクトラ』に準えてあり、ギリシャ神話的要素も混ざってくる。全てを理解することは艱難だが、アンゲロプロス独特の長回しや時空をも超えてしまうパンなど、映像美学が難解さを払拭するほどの映像イメージとなる。細かなカット割りは一切なく、スペクタクルとして盛り上げようなんて意図も皆無なのに、歴史が動く模様は淡々とした中でも迫力を感じるのだ。
約4時間頑張って観続けた後、ラストシーンでは旅芸人一座は冒頭シーンと同じ駅に降り立っている。そこで得る感覚は、最初と最後で何故か全く違っている。
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