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[コメント] ふるえて眠れ(1964/米)

階段で演じられるサスペンス演出としては、『らせん階段』、『サイコ』、『断崖』などの傑作群を抑えて堂々のナンバーワンだ。→
ジェリー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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正直いって、セシル・ケラウェイ除く登場キャラ全員の知能程度に疑問符が3つばかりつくところが弱点ではある。それに、ある有名なサスペンス作品からのパクリも感じられなくもない。

しかし、ベティ・デイヴィスの演技が素晴らしい。若い頃起こった殺人事件で一生棒に振った哀れな女ぶりが抜群の演技力で浮かび上がっている。優れているのは哀れさだけではない。醜聞と周囲からの色眼鏡とむくつけな好奇心から身を隠して生活し始めてからの、なおも娘時代にあこがれる置き火のような執念というか、ぬめぬめとした生命力のような部分がうまく表現されている。その共存ぶりが実に生々しく、主人公の総体としての怪女ぶりが実に鮮やかだ。この主人公は、若い頃の事件で神経が切れそうなくらい細くなってしまった弱弱しい隠花植物ではない、実に神経の太い女なのだ。そのような女が発狂寸前まで持っていかれることがこの映画の事件の異常度を裏付けるのだ、この映画のラストシーンで、車に乗ったベティ・デイヴィスがずっと住み続けた家を離れる時、万感の思いでふりかえるシーンは陶然とするうまさだ。

ここまで彼女を誉めておいてオリヴィア・デ・ハヴィランドアグネス・ムーアヘッド を誉めないわけには行かない。このふたりのこくのある気合の入った演技で、正直ちょっとだらけがちな長尺とご都合主義の脚本の難点を隠して、映画をうまく引き締めたと思う。太ったジョゼフ・コットンの弛緩演技がなければ、この映画4点をつけてもよかった。(はっきり言って、この映画、ロバート・アルドリッチ作品にしては男に生彩がないのだ)

撮影、美術、照明は文句なし。特に、ジョゼフ・F・バイロックの撮影は、思い切った仰角と俯瞰、極端なクローズアップを多用してシャープな効果を挙げた。夢シーンにおけるフィルターの効果もすごい。

全部がすごいという映画ではないにせよ、十分楽しめた。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ジョー・チップ 3819695[*]

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