コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 江分利満氏の優雅な生活(1963/日)

敗戦とは革命と同じであり、それを境に価値が180度変わった分けで、江分利(小林桂樹)のように時代に乗り遅れた不器用な人々の行き先をなくした想いが、猛スピードで突っ走る昭和30年代という時代の奥底には、もの言う術なくマグマのように蠢いていたのだ。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







毎夜、毎夜、酒の力を借りたガス抜きで、なんとか均衡を保ていた江分利(小林桂樹)の「その、行き先をなくした思い」は文学賞受賞による脚光という噴火口を得て一気に爆発するのだ。火山の爆発は、平穏に暮らす人々にとって唐突であり実に迷惑である。そして、爆発以前の山の鈍重さと、噴火後の取り留めのなさのギャップは滑稽でもある。

これは、そういう喜劇であり、江分利満と岡本喜八、そして彼らの同世代者たちによる止むに止まれぬ「笑われることを覚悟した」爆発喜劇なのだと思う。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)荒馬大介[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。