[コメント] キング・コング(1933/米)
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初代キング・コングの顔は、眺めるにつけ商店街のスケベなおっさん、とでも言いたくなるような風貌である。その上にあらゆる生物に対して情け容赦もない。彼が雑食性かどうかは知らないが、ドクロ島でもニューヨークでも、コングはしばしば人間を牙にかけている。「♪恐くなんかないんだよぉ〜、キング・コングは友達さ」なにをゆーておるのだ、てな具合である。
アンは(そんな暇もないだろうが)そんなコングに情けをかけようとは一切しなかった。その恋人ともなれば尚更のことであったろう。それは人間に生まれたからには仕方ないだろうが、このコングの騒動の原因をつくった張本人であるデナムが裁かれなかったのは、やっぱり(この当時の)アメリカなんだな、と思う。彼のせいで無数の人間が命を落としたにもかかわらず、警察を前にして一世一代の名台詞を披露してTHE END。そんな映画であるから、センチメンタリズムのかけらもない「正統派の」怪獣映画として終わり、自分にとっては物語への共感は一切ないままに終わったというわけだ。
しかし、画面のみに関心をむけるとすれば、大いに楽しめる映画だとは言える。明らかな草食恐竜がクルーに襲い掛かる勘違いに目をつぶれば、恐竜対巨猿のスペクタクル、古代文明の建造物などなかなかに惹かれる。今ではギクシャクしているとしか見えないクリーチャー達も、この当時としては最先端の特撮である。これを人間の視点のみならず、コングの視点、「神」の視点から見ることがダイナミックな画面を生む課題となり、その後の怪獣映画に託されていったのだな、と理解される。
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