コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 素晴らしき放浪者(1932/仏)

社会性、娯楽性、芸術性の三者共存が無理なく果たされている。制作年を考えると画期的。
町田

浮浪者を一個人として描きながら、女性を人として描いていないところに時代と監督の限界を感じるも、まぁ、いい映画。

浮浪者が何故、浮浪者へと落ち込んでいったかも考えずに、見得や気分や偽善で中途半端に手を差し伸べて、礼やモラルを求めるなんてのは傲慢もいいところである。彼はそれが出来ないから、人に頭を下げることが出来ないから、浮浪者になったのである。

****

以前、バイトしていた新宿二丁目のコンビニの向かいのマンションで管理人をしていたオッサンが突如としてホームレスになった。典型的な江戸っ子気質でだれかれかまわず話し掛けてくる気安さと立ち読み客を注意するような説教臭さをもっていた。店員の中にも好き嫌いがハッキリ分かれていたようであるが、何故か俺は(無愛想にも拘わらず)気に入られていて、俺はそれが嬉しい反面、忙しいときなんかはわずらわしくもあった。しばらく来なかった彼がホームレス姿で店に久しぶりに来店したとき、俺は正直度肝を抜かれた。異臭を店内に漂わせながら以前のように「よう」なんて声を掛けてくれるのだが声には全く張りがない。俺は動揺を隠しながら「あ、おひさしぶりです」と気安く返し以前と同様に接客した。安心したのだろうか、その後もしばしば来店したが、小太りの彼はみるみる痩せていった。声にはますます張りがなくなっていった。「もうおれなんかだめだよ」と口癖のように言った。笑うしかなかった。ある朝方、駅から店へと向かう俺の視界に一人のホームレスが入りかけて、急いでいた俺はとっさに目を逸らした。後ろから声が聞こえた。「なんだ・・・無視しやがった・・・」俺は振り返ることが出来なかった。その朝以来、俺はオッサンの来店を望まない様になった。コソコソと怯えていた。あの声がオッサンのものかどうか確かではないのにも拘わらず。しかしオッサンはもう(少なくとも俺の勤務中には)来店することはなかった。俺は安心した。自分はなんという卑小な人間だろうと思った。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)KEI[*] けにろん[*] くたー

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。