[コメント] 大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン(1966/日)
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本作をビデオで初見した時は小学生。ウルトラマンに興味を持ち始めた従兄弟と共に賞を始めたが、開始30分でその従兄弟は寝ていた。かくいう自分も途中から睡魔に襲われ、眠い目をこすりながら何とか最後まで観た。なので、本作に関しては余り良い印象がないのだが……。しかしこうなるのもしょうがない。昭和ガメラシリーズの中では上映時間が一番長く(100分以上あるのは本作だけ!)、初っ端にガメラが黒部ダムで大暴れしてから、次に怪獣が出るまでが長いのだ。その間、人間側の欲望渦巻くドラマが延々と展開されるのだが、これが観ていて実につらい。
いや確かに本郷功次郎も江波杏子もいい仕事をしているし、とりわけ藤山浩二の役なんかインパクトがありすぎ。サソリに刺されそうになる仲間を見殺しにしたり、ダイヤに魅入られすぎた結果最終的にバルゴンに食べられるとか、子供時代の自分でもちゃんと覚えているくらいの悪役ぶり。後に主演の本郷氏は似たような役ばかり回ってきているが、藤山氏は「ジグラ」でヘレンの父親役という優しいパパ役を担当している。この差をちゃんと分かっている氏の芸達者ぶりを観よ!
そういう面で良いところはいくつか見受けられるというのに、肝心の演出が重すぎる。この脚本に合わせたのかと思いきや、監督の田中重雄という人の趣向がこうらしく、『秦・始皇帝』で見せていた“重厚と見せかけてただ重いだけ”の雰囲気を本作でも作ってしまった。「始皇帝」も観ていて途中で退屈になり「この映画のかったるさは過去にどっかで……」というデジャブに襲われたが、同じ監督だと分かって妙に合点がいった。子供時代にあれだけ重いものを食えという方が無茶である。
特撮は、前回は本編担当だった湯浅憲明。過去の経験を受けての起用だったそうだが、慣れていないのか広いスタジオを持て余している感がある。とはいえガメラもバルゴンも別段造形が良いわけではないが、とにかく流血しまくる勢いの良さや、冷凍液と虹光線の威力をまざまざと見せ付けたり、長所短所をきちんと描写しているところはなかなか面白い。凍ったまま飛行し、バラバラと砕けていく自衛隊機なんて、CG時代の昨今でもなかなか描けるものではないはずだ。
あらすじにも書いたが、ヒットはするも子供達に対する受けが悪かったことをふまえて、以後ガメラは子供向け路線に徹底することとなる。後にも先にも、子供達の前にあんな重い料理を出した怪獣映画は本作ぐらいのものだろう。
もっとも『ゴジラ』も重いが、あの重さと本作でいう「重さ」は全く異質のものであることを付け加えておく。それくらい本作は異色作なのである。
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