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[コメント] 心の香り(1992/中国)

人は誰でも孤独である。孤独だからこそ、人は人のぬくもりやあたたかさを求め、生きていることを実感したくなる。少年と祖父の相容れないふたりの突然振って沸いたような共同生活や周囲の人たちとの交流を淡々と綴った秀作。少年と祖父の心を繋げたものは「京劇」。喜びと寂しさは同居するものだと、この映画を見終わって感じた。
ことは

少年の黒眼鏡をかけた姿がぎこちなくて、でもそれが逆に魅力的に映りました。また、両親の離婚を経験しているせいか、世の中を妙に悟りきったように言う、彼の少し屈折した心境がおもしろかったです。

「結婚したら離婚するのは必然法則さ」と自信を持って言い切るところなど、痛いけれども、ふっ…と和ませてくれます。

祖父も、また魅力的に描かれています。京劇のスターから退いてはいるものの、まだまだ自分は若い者には負けないという気概があり、時に無茶をしてしまいます。また、友達として長年付き合っている女性を、好きだけれども、彼女には行方がわからずにいる夫がいるために、友達として、お互い支えあいながら、生活している。

この少年と祖父の心の交流が、初めはぜんぜんうまくいかない。けれど、途中で両親が離婚したことを少年の口から聞き、お互いの気持ちが少し向き合い、最後は「京劇」というふたりにとっては、なくてはならないものによって、お互いの心が通じ合う。後半の展開は、胸にグッとくるものがありました。

そして最後に、もうひとつ忘れてはならないのが、隣に住む少女の驚くほどのかわいらしさ。もっと出番があれば、言うことなかったんですが…。

まあ、それはともかく、少年が柵越しに、少女に京劇の化粧(?)をしてやる場面は、もうぞくぞくするほど、美しい場面でした。少女が柵の向こうから目をつぶってグッと顔を突き出してくる、その場面の絵になることといったら、言葉では言い尽くせないほどでした。

後半の盛り上がりと、彼女のかわいらしさ、そしてより多くの人に見てほしいという願いをこめて、本当は4点にしようと思ったのですが、思い切って5点をつけました。もう一回見たら、より深く、ますます味わいのます映画になると思います。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)セント[*] ダリア けにろん[*]

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